食中毒対策における宅配弁当店とレストランの違いを考える

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 私も父の弁当屋、久留真家(くるまや)の経営を見るようになって、早10年。あっという間だったなと思っています。見るようになったのは、これあらたを起業して10ヶ月後。リーマンショック後の影響もあり、売り上げも下がっていましたが、自分でも見事なくらい売上をV字回復以上に回復させたのを覚えています。ただ当時は、経済が低迷ながらも動いており、社会構造の大きな変化は起きていない状況でした。しかしながら、今回のコロナショックは、法人やロケ中心の宅配弁当店としては、なかなか経営の軸の見定めが難しい状況におかれています。明らかに会議需要が減ることは見えていて、競合が一気に増える機会にもなってしまいました。まだ、精神論レベルですが、なんとかできればと思っています。

 さて、そんな中で、色々と過去を振り返っているわけですが、10年前に一番驚いたことは、「冷めたときの味の維持と食中毒リスクの低減」の両立へのこだわりでした。父はそんな表現をしてはいませんが、私の言葉で整理すると、ここにこだわって今もやっているように見えます。

 味という観点から見てみると、すぐに食べるレストランと、時間が経ってから食べるお弁当では、使うお米から違うと考えています。実際に、久留真家では、9年前に北海道の卸問屋から「ななつぼし」を仕入れるようにしています。おそらく、宅配弁当店で使う平均的なお米よりも単価は高いかもしれませんが、冷めてもお米がおいしいことは大切だという考えのもと、当社ではお米にこだわり続けています。実際、冷めてもおいしいお米に共通していると思っているのは、周辺水分を吸ってもベチャッとしない傾向があることです。これは、食中毒リスクの観点からも実は意味があるのではないかと思っています。おかずも冷めてもおいしいことにこだわっています。

 一方食中毒予防という観点では、さほどレストランと変わらないと思います。夏場のお弁当では、目玉焼きはよく焼くとか、生卵は入れないとか。当店の食中毒予防でひょっとしたら特徴的かもしれないと思うのは、作り置きした副菜を使うとき、必ず食品から異臭や腐敗傾向(煮物で粘りが出るなど)がないかと鼻と目で確認することにしています。昔は多くの飲食店で当たり前のようにやっていた行動のようですが、冷蔵技術の発展や調理のオートメーション化の流れで、こういうアナログな作業を割愛する傾向があるというのは耳にします。

 そういう意味では、お客様にご迷惑をおかけしない商品を提供している自信はありますが、30年以上やっていると、「食中毒になった!」という電話をもらうことは何度かあったそうです。そういうときに、「隠さずに、積極的に保健所に報告する」ということを意識しています。実際、保健所の調べて、食中毒の原因はお客様にある場合(ずいぶんと時間を経ってから食べた)もあったようですし、嫌がらせの場合もありました。当店が食中毒の原因と特定されたことはありません。

 レストランとの一番の違いは、料理をいつ召し上がるかわからないということです。私も勉強として、いくつかのお店でテイクアウトをしてみましたが、多くのレストランで、お店で出しているまま出そうとされているのを感じます。こういう状況に触れると本気でテイクアウトをやっているわけではなく、繋ぎでやっているんだなと痛感させられます。レストランと宅配料理は全く別物です。別物だからこそ、食中毒対策も違いがあります。これから暑くなり、食中毒リスクも高まります。料理をいつ召し上がるかわからないという観点は、当たり前のようで、当たり前ではないように感じています。テイクアウト・デリバリーに参入されるレストランさんには意識していただければと思います。

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