三方よしと弁証法を活用した、景気の影響を受けない経営

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 今回書かせていただく記事は、事例ではありません。自分の目、メディア、コンサルタント仲間などを通じてえた情報をもとに、大中小問わず不況にも強い企業を分析した結果感じたことを書こうと思います。まず、好況でも不況でも強い企業の多くは以下の2つを兼ね備えています。固有の技術があれば、この2つはいらないのではという方もいらっしゃるかもしれませんが、固有の技術をもっている企業は、この2つを兼ね備えている確率が極めて高いと考えています。

  1. 社会一般に対して自分たちが何ができるか?を常に考えている
  2. 業界の常識・既存の常識にとらわれないでものごとを捉えている

 1つ目については、いわゆる「三方よし」という考え方です。これは、ビジネスにおいて、当事者の売り手と買い手だけでなく、そのビジネスが社会全体の幸福につながるものでなければならない「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の経営理念です。この考え方を意識しているかどうかは別ですが、安定して業績の良い企業は、自分と相手以外の社会に対する価値というものをきちんと見ながら経営をしています。世間をみながら経営をしているからこそ、自分たちの強みを活かして新たな事業展開が次から次へと生まれてくるわけです。

 2つ目については、非常識を意識的に否定せずに味方につけるということです。中期経営計画等で謳っている企業(たとえば、常識にとらわれない新しい視点・発想といった文言)はかなり多くありますが、実際の実績をみると「本当にそういう議論が社内でできている?」と疑いたくなるような場合も少なくありません。なぜ「意識的に否定せずに」と書いたかというと、自然体では、常識にとらわれてしまい、非常識を受け入れ難いフィルターが働くからです。たとえば、私がいた鉄道会社で、「安全を意識するためには、サービスを多少捨てても構わないのではないか?」という理屈はすんなり受け入れられるのですが、「サービスを意識するためには、安全を多少犠牲にしても構わないのではないか?」という議論は当然受け入れられません。受け入れられないどころか、反射的に叱られます。ただし、ここで叱ってはいけないのです。実際に安全を犠牲にすることはあってはならないことですが、安全を犠牲にしてまでも提供したいサービスをあぶり出した上で、そのサービスを実践するために、どうやったら安全を最高品質で保てるかという議論は必要はなわけです。そのためには、一旦非常識を受け入れなければ真に安全とサービスを両立するための知恵はなかなか出にくいということです。これは、テーゼ(正<常識的な意見>)にあえてアンチテーゼ(否:非常識的な意見)を投げかけて、アウフヘーベン(合:新しい価値の創出)をするという方法の弁証法という考え方に近いものです。

 この2つの考えができている企業は圧倒的な安定性をもっていると考えています。ではどのようにこの2つを維持するために具体的なことをやっているのか下記に比較的簡単にできることを列記いたします。

  • 業界の常識を書き出し、その真逆を書き出す。真逆からそこから考えるミーティングをする(常識とその裏を両方書き出しておくことがポイント)
  • ミーティングの際に、社会・世間という第三の視点での投げかけをすることを互いに意識する
  • まだ常識にとらわれていない新入社員を含めた若手の懇談会の場を本当に自由に意見がいえる形で開催する(事前に、質問を用意したりしない)
  • 社員飲み会を社長主催で頻繁に場を設けて、酒の力を借りながら、意見がでやすい環境をつくる
  • 業界常識に引っ張られないようにするため、役員会議のファシリテータ役としてだけコンサルタントを活用する

 もちろん、これら2つをもちながら、最終的に経営の意思決定力が問われることは言うまでもありません。ですが、これら2つがあることでより厚みのある意思決定になっているということを申し上げたいと思います。

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